2010年2月12日金曜日

改葬――お骨のお引っ越し


 「改葬」という言葉を使うと、何やら、お墓全体を新しい墓地に移すことのように思われるかもしれませんが、そうではありません。お墓に納めてあるお骨を、ほかの墓地に建立されているお墓に移すことを「改葬」といいます
(考えてみてください、「お引っ越し」も、そこに住んでおられる方が移り住むのであって、住んでいた家やマンションまで動かすわけではありませんよね)。
               
◆改葬には許可が必要

 改葬とはそもそも、場所的な移動を伴うものであると考えられています。ですから、過去に一度、埋葬した死体を掘り起こしたうえで火葬を行い、再び同一墳墓に戻すような場合、改葬許可は必要とされないと考えられます。
 しかし、同じ墓地内の隣の墓所に新たなお墓を建立し、そこに焼骨のすべてを移す場合や、同じ墓地内に建立されている合葬墓、納骨堂内で移動する場合には改葬許可が必要であるとされています(ちなみに、納骨堂等に納めた焼骨について、これを納骨堂内で移動させることについては、改葬許可の必要はないとされています)。
            
◆改葬の手続き

改葬の流れ
 まず、大まかな手続きについてご説明をしておきましょう。
 原則としては、初めに当該お墓の使用者(名義人)が、墓地の管理事務所の職員らから、その焼骨が現に墓地にあることを明らかにした「埋蔵証明書」をもらいます。そして、その「証明書」を所管窓口に提出し、「改葬許可証」(別掲書類参照)の申請書に必要事項を記入したうえで、その「証明書」とともに、当該墓地の所在地となる市町村に提出すれば、「改葬許可証」が交付されることになるでしょう(墓埋法・施行規則第2条)。
 無論、埋蔵のときと同様、墓地によって別途必要とされる書類があります。例えば、改葬する先の墓地の管理者が作成してもらうことになる「(焼骨の)受け入れ証明書」です。様々なケースがありますので、踏み込んで列挙することは割愛します。皆さん方、おのおのが納骨をする前に、改葬元の墓地、改葬先の墓地に問い合わせをして確認してください。
 ただ、改葬がなじまない慣習の地域・市町村。あるいは焼骨に対し特別な感情を抱いている関係者、ときには当の墓地の管理事務所の職員らからの反発を受け、発行を認めないか、あるいはとんでもない条件を突き付けられることもあります。
 例えば、「様々な経緯から『埋蔵証明書』が得がたい特別の事情がある場合も珍しくありません。そうした場合、市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面」があれば改葬許可証を交付することは差し支えないとされています(墓埋法・施行規則第2条第2項2)。
 ただし、これは個別の事案なので、具体的にどのような書面を提出するのか、明確に述べられてはおりません。あくまでも私が考えるものではありますが、当該墓地の権利証、墓地の管理事務所の職員らと話し合った際の内容の詳細(改葬を拒否している理由)を書面で取りまとめたもの。改葬する(したい)故人の除籍謄本などが墓地使用者、名義人が、市町村長(窓口職員)は当該墓地側にも事実確認を行ったうえで、交付されるはずです。

改葬許可証(記入例)
 もっとも、ただ単に「埋蔵証明書が交付されない。されていない」というだけのことを理由にして、改葬許可証が交付なされない、交付しない、ということもあるかもしれません。
 なぜなら窓口職員となる担当者は、必ずしも墓埋法に精通しているとは限らないからです。それに墓地以外の業務も並行してこなしてはおりますし、定期的な人事異動も行われます。ですから、墓埋法のことをよく知らないという場合もあります。やはり、私たち自身がよく学んでおかねばならないでしょう。
焼骨(骨壷)以外の、土、線香の灰などを移す場合
 納めるものが焼骨ではない以上、埋蔵(改葬)には当たりません。ただし、そうした焼骨以外の遺品などを、納骨棺内に納める場合、それが特に貴重なものであると思われる際には、盗難などの可能性について懸念する墓地の管理者であれば、これを承諾しない場合もあるかもしれません。
 地域では、骨壷(こつつぼ)に納めてから墳墓に埋蔵するのではなく、納骨棺内に焼骨を直接納めてしまうということが慣習になっております。が、こうした場合の改葬、分骨の手続きはどのようにすればよいかという疑問に時折ぶつかるケースであります。一見して、単なる土や砂と一体化している場合、特に許可証が必要であるとはされません。しかし、例えば、焼骨の形状が残っている場合、その焼骨が誰のものであるのか、(便宜上)特定されたものと(仮定)して、改葬や分骨の手続きを行うべきでしょう。
「外国へ改葬する」あるいは「自宅に持ち帰りたい」という場合
 いったん埋葬した焼骨を、取り出すことを求められるケースなども考えられます。こうした場合、墓埋法第2条第3項には、改葬を「埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すということをいう」と規定されていることを踏まえ、「墓地または納骨堂に埋蔵、収蔵することなく、例えば、焼骨を自宅に安置し続けるような場合は、改葬には当たらない」という判断がなされるケースもあるようです。
 しかし、いったんは自宅に引き取られながら、後日、結局はほかの墓地や納骨堂に納めることとなってしまうことも十分考えられます。この場合、埋収蔵するに当たって必要とされる改葬許可証などがないことからトラブルとなってしまったケースもあります。
 したがって、こうした場合、墓地の管理者とよく相談するとともに、改葬許可証の発行を所管する市町村長(窓口職員)からも判断を仰いだうえで対処すべきであると思われます。
墓地から全骨を二つに分けて、同時に別々の霊園に焼骨を移す場合
 墓地から全骨を二つに分けたうえで改葬し、同時に別々の霊園に焼骨を移す場合、おのおのの焼骨に改葬許可証が必要になるのか、という疑問があります。いずれか一方の焼骨は、改葬許可証による「移転」になりますが、もう一方の焼骨については、墓地管理者が発行する「分骨証明書」による「移転」となります。ちなみに、二つに分けた焼骨のいずれを改葬許可証による移転とし、いずれを分骨証明書による移転とするのかについては特に定めはありません。
 例えば、分けた焼骨の多い方に分骨証明書を用い、少ない方に改葬許可書を用いても何ら問題はありません。ちなみに、分骨証明書によって埋蔵(もしくは収蔵)された後になって、改めて他の墓地(もしくは納骨堂)に「移転」するようなケースについてですが、この場合は分骨証明書で処理されることになります。「埋火葬許可証、改葬許可証が発行されるのは、一体の遺骸(いがい)、焼骨に一通だけ」というのが原則だからです。ただし、実務的な視点に立つなら、分骨証明書には、元の焼骨の埋葬許可書(もしくは改葬許可証)の写しを添付するようにした方がよいかもしれません。
◆「お墓」~「墓石」を移動させるには
 通常、一般的な墓地では、公営・民営を問わず、1区画に1墳墓(お墓)を原則にしています。既に「お墓」が建立されている場合、ここで「お墓」のお引っ越し先になる、受け入れ側の墓地の承諾は受け入れているのでしょうか。
 また、それが可能なのだとしても、指定石材店制度との兼ね合いが生じてきます。元のお墓から撤去をするまでが元の墓地の石材店の仕事になり、これの運び出し、新しい墓地への据え付けがその墓地の指定石材店の役回りになるのでしょうか。あるいは特例事項として、新しい墓地への据え付けまでが元の墓地の指定石材店の仕事になるのでしょうか。双方の墓地の指定石材店とも、そうした役割分担について、使用者自身が調整しておく必要が出てくるでしょう。
 ちなみに費用ですが、元の墓地に建立されていたお墓(に使われている石材)がかなりのものでない以上、新しく建立してしまった方が安上がりになる場合も少なくありません。そうした点についても、石材店と事前に話し合っておかなければならないでしょう。


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横田 睦 よこた むつみ
社団法人 全日本墓園協会 主任研究員
 1965年生まれ。東京工業大学大学院工学部博士課程修了。博士(工学)。都市計画学会、宗教法学会等に所属。大学在籍の頃より、自治体、民間を問わず、葬祭施設の基本計画の策定などに参画。著書は「お墓を上手に選ぶ知恵」(KAWADE夢新書)、「お骨のゆくえ」(平凡社新書)、「墓園・斎場管理運営の実務」(新日本法規)、「墓園の計画・運営等の法律実務」(ぎょうせい)など。


(2010年2月12日 読売新聞)
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※記事には「お骨だけを動かす」事を主に掲載されていますが、勿論、墓石ごと移してくる例も、多くございます。どちらの場合でも御相談させて頂きます。           
                                      

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